医療体制が十分に整っていない国や深刻な治安悪化が懸念される国の海外赴任者は、現在会社の指示で一時帰国している方も少なくありません。一時帰国して日本で勤務している期間のお給料にかかる税金に関して、EY税理士法人の2020年3月のTAXアラートで取り扱いについて解説してくれていたので、簡単に紹介します。
非居住者の所得税の取り扱い
まず、所得税法上、非居住者(1年以上駐在予定の人等)は国内源泉所得(国内で勤務した対価等)のみ日本で課税の対象となり、国外源泉所得(国外で勤務した対価等)は非課税扱いになります。つまり、海外赴任中の給与は日本では非課税になります(税務上の役員の場合除く)。しかし、今回のように一定期間一時帰国していて日本で勤務することになった場合、「非居住者の国内源泉所得」に該当し、20.42%の税率で課税されます。
なお、課税対象は、日本勤務期間分の日本払い給与だけではなく、一緒に一時帰国中の子女の学費や賞与計算に含まれる日本勤務期間分も含まれるので注意してください。
この所得税は誰が負担するの?
通常、海外赴任者の給与は手取が補償されるように計算式が組まれています。しかし、一時帰国中に日本で所得税が発生した場合、誰が負担するかは各社の取り扱いにより異なります。
①会社が負担してくれるケース
手取補償の考え方がベースにある場合、会社が負担するケースも多いようです。この場合、会社が代わりに支払った所得税分は税務上は本人に対する給与扱いになるため、グロスアップ計算が必要になります。
②本人が負担するケース
一時帰国中でも海外赴任時の手当等を支払い続ける代わりに、日本の所得税は自己負担するというスタンスをとる場合が考えられます。
赴任国での個人所得税への影響
一時帰国中に発生した日本での所得税を会社が負担した場合、赴任国が全世界所得課税(国内外すべての所得に課税)の場合は、この負担額が赴任国でも課税対象になります。この場合、日本と赴任国の双方で課税される二重課税になることから、赴任国で外国税額控除(税金計算で減額調整)を受けられる可能性があります。会計事務所に手続を依頼する手数料と外国税額控除で取り戻せる税金を比べて検討する必要があります。
コロナで変わる海外赴任者規程
今回、緊急一時帰国者が大量に発生するというイレギュラーな事態を受けて、海外赴任者の規程を一部見直す企業も出てくるかと思います。
参照元のEY税理士法人の記事は、「海外赴任者規程において暗黙の前提になっている「生え抜きで現役の日本人男性が(専業主婦の)妻と子を連れて海外に赴任する」というステレオタイプの海外赴任者像が変わりつつあることも踏まえ、今後の海外展開も考慮しながら海外赴任者規程等のポリシーも見直す必要があるかもしれません」というコメントで締めくくられていました。コロナをきっかけに、海外赴任規程も抜本的な見直しがされるかもしれませんね。