収入を得ると発生するもの、税金
労働の対価として収入を得たとき、基本的には税金がかかってきます。会社員であれば、源泉徴収制度により毎月お給料から会社が差し引いて納税してくれるので、原則は確定申告をご自身でする必要がなく、会社の年末調整で完結します。
しかしながら、雇用される以外の方法、たとえば、英会話やお料理、ヨガ教室をオンラインで開いたり、業務委託の形で企業の営業や広報、経理業務を一部請け負ったりする場合、原則ご自身で収入からかかった経費を差し引いていくらくらい利益が出たか、いくら税金がかかるのかを計算し納税しなければなりません。
経費の範囲や税率は、個人事業主として活動するのか、法人として活動するのかにより異なってきます。まずは、ご自身の立ち位置にはどんな選択肢があるかを理解し、どうするのが今の自分にとって一番合っているかを考えてみましょう。
①個人事業主にならず、会社も作らない
会社員が副業を始める場合など、本業としてそれなりの時間や労力をかけることなく片手間で収入を得るときには、必ずしも開業する必要はありません。その場合には、雑所得として税金計算をすることになります。
雑所得とは、たとえば、公的年金、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、仮想通貨の使用による利益など、給与所得・事業所得・不動産所得・退職所得・山林所得、譲渡所得・一時所得・利子所得・配当所得のいずれにも該当しないその他の所得のことをいいます。
【雑所得計算式】公的年金等以外の雑所得の金額=総収入金額ー必要経費
事業性があるかどうか(雑所得なのか事業所得なのか)に明確な基準はなく、実務上は以下の4つで判断されます。アフィリエイトやオークション、ライターなどを副業として週末数時間だけしている場合等は、雑所得と判断されます。
①自分自身で時間や労力、経費を使って事業を行っているか
②営利性・有償性があるか
③反復継続する意思が客観的にみてあるか
④社会的地位が客観的に認められるか
雑所得のメリットとデメリット
メリット
開業届の提出や帳簿付けが不要
確定申告手続が簡単
一定の要件を満たせば、雑所得の金額が20万円以下であれば所得税の確定申告が不要(住民税の申告は原則必要)
デメリット
個人事業主ではないため、青色申告ができず税金計算上不利になる
個人事業主ではないため、仕事をしているという主張がしにくい
②個人事業主として開業する
個人事業主として開業届を提出し、事業を始めることができます。個人事業主の確定申告の方法は青色申告と白色申告の2通りがあり、税金計算上お得な青色申告がオススメです。青色申告をはじめるためには、期限内に青色申告承認申請書を提出する必要がありますので、開業届と一緒に管轄の税務署に提出しましょう。
開業届と青色申告承認申請書の提出方法はこちら↓
個人事業主のメリットとデメリット
メリット
開業・廃業手続が無料なので、気軽にはじめられる
最大65万円税額計算上の経費が増える等税金計上のメリットが多い 青色申告を選択することで、
従業員4人以下の場合は社会保険の会社負担が原則なし(5人以上の場合は業種による)
デメリット
税金の経費の範囲は法人に比べて小さい
(ex.自分の給料は経費にならない)
青色申告の場合でも赤字繰越は3年間限定
会社員が個人事業主になった場合には、失業保険の対象外になる
青色申告のメリットはこちら↓
③会社を設立する
法務局へ登記申請し、会社を設立することができます。会社設立というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、リモートワークの普及やでビジネスプロセスのデジタル化により、1人会社を設立する方も年々増えています。
会社設立のメリットとデメリット
メリット
取引・融資先としての信用度は高い
経営者の給与や保険料等も経費として計上可
赤字の繰越は原則10年間可能(平成30年3月31日以前に開始する事業年度までは9年間)
デメリット
設立手続のために定款作成等が必要(約6-25万円)
事業廃止の際にも、解散登記や公告等のために約7万円~費用が発生
赤字でも毎年法人住民税(均等割)7万円発生
1人だけの会社でも原則社会保険加入義務有
株式会社と合同会社
会社には様々な形態がありますが、一般的に設立される会社には株式会社と合同会社があります。近年では設立される法人の約2割、2万件以上が合同会社です。
信用性を重視したり、将来株式公開や投資家からの増資を検討している場合は株式会社を、設立・運営コストを下げて迅速な意思決定をしたい場合は合同会社を設立する場合が多いです。
たとえば、以下の場合には合同会社が選ばれる傾向があります。
会社名が前面に出ない、もしくは、信用力をあまり気にしない1人会社や家族経営など小規模経営
許認可取得のために法人化が必要な事業(介護事業等)
資産管理会社など
株式会社の主な特徴とメリット・デメリット
主な特徴
◎出資者は有限責任(出資額以上の責任を負わない)
◎原則株主1株1議決権。株主総会で基本的な方針や重要事項を決定する
◎出資者=経営者でなくてもOK
メリット
社会的信用度・認知度が高い
→採用・融資・集客に有利
合同会社同様、個人事業主より節税しやすい
ex)自分の給料を経費にできる
法人税は所得税のように所得があがるほど税率があがる累進課税ではない
デメリット
設立コストが合同会社に比べて高い

運営コストも合同会社に比べて高い
ex)役員の任期最長10年 再任ごとに登記必要
決算公告の義務がある
出資割合などによっては、迅速な意思決定や自由な利益配分が難しくなる
合同会社の主な特徴とメリット・デメリット
主な特徴
◎経営者=出資者
◎出資者全員が有限責任社員(出資額以上の責任を原則負わない)
◎原則出資者1人1議決権(定款で異なる定め可能)
メリット
設立コストが安い
運営コストも安い
役員の任期がないため(株式会社は最長10年)任期終了ごとにかかる登記費用(資本金1億円未満は1万円)が不要。決算公告義務もなし。
出資者=経営者のため、定款による社内自治が基本で、迅速な意思決定が可能
デメリット
株式会社に比べれば社会的信用度・認知度が落ちる
定款による自治が基本のため、最初に上手に設計しないとトラブルがおこりやすい
ex. 原則出資額に関係なく利益配分が行われるため、必要に応じて定款で「出資額に準じた利益配分」等の記載が必要。
代表者の肩書は代表取締役ではなく代表社員
株式公開や投資家からの増資は見込めない
非居住者(帯同者)の場合
雇用されずに自分で収入を生み出す場合の立ち位置として、①何もしない②個人事業主になる③法人設立という3つの選択肢をご紹介しました。こちらは、日本の居住者の場合は問題なく適用することができますが、帯同などで一時的に非居住者になっている場合は注意が必要です。収入を得ることによる影響は、日本の税金だけにとどまらず、帯同国での税金やビザ、パートナーの会社での取り扱い(帯同手当等)等多岐にわたる可能性があります。