今回は転職・再就職・副業を検討している方向けに、来たるべきプロジェクトワーク時代に備えてできることを考察しました。今年育休から復帰しようとしていた方、本帰国になった方だけでなく、今までどおりに働いていた方、専業主婦(主夫)の方、私自身も含め多くの人にとって、急に訪れた制限のある現在の環境がこれからの働き方を考えるきっかけになっていると感じます。
プロジェクトワークの台頭
最近、インターネットのプラットフォームを通じてスポットで仕事を請け負うギグワーカーが増加しています。企業に属さない人にプロジェクト単位で働いてもらうプロジェクトワークが増えると考えられている理由は主に3つあります。
①リモートワークの普及
コロナウイルス感染拡大の影響で、自宅でリモートワークせざるを得ない人が増えました。ビジネスプロセスのデジタル化はすでにかなり進んでいましたが、最近では政府の推進もあって電子印鑑や電子契約も一般的なものとして受け入れられています。ビジネスで利用できる高性能なシステムや機器も今や低価格で提供されており、プロジェクトワークがしやすい環境が整いました。
②景気後退トレンドの中での企業の経費削減の必要性
先日、有識者による「景気動向指数研究会」が2012年12月に始まった景気回復局面が18年10月に終了し、景気後退局面に入ったと暫定的に認定しました。コロナウイルス感染拡大の収束時期も未明ななか、今後本格的に多くの企業の業績の悪化が予想されます。企業の生き残りをかけて、人件費の削減を含めたコストカットが行われる可能性が高いです。
③プロジェクトワークを希望する人材の増加
図らずもリモートワークを経験したことで、自宅で仕事をするスタイルも悪くないと感じる人が増えました。人と会う機会が減り自分と対話するタイミングが増え、今後のキャリアを見つめなおす中で、プロジェクトワークというビジネススタイルを自分事として意識する人も増えました。
外注する企業側のメリット
企業側の外注の主なメリットは4つあります。コミュニケーションの難しさや人材育成の面など新たな課題は出てきているものの、雇用から業務委託契約切り替えはますます増加が見込まれています。
①社会保険料を会社で負担する必要がない
従業員の社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)は、企業と従業員で折半し、労災保険は企業側で負担しています。企業の負担額は給料の約15%になりますが、外注する場合には、企業側の社会保険料の負担がなくなります。
②残業代や有給休暇等の労基法関連のトラブル防止
雇用契約は使用者が労働者に対して報酬を与える契約である一方、業務委託契約は独立した事業者間の契約であるため、労働基準法等の対象外になります。
③消費税の節税になる
給与は消費税法上課税の対象になりませんが、外注費は原則消費税の課税対象です。企業が納税する消費税は受け取った消費税ー支払った消費税で計算するのですが、この外注費の消費税は「支払った消費税」に含めることができるため、納税すべき消費税が減ります。ただし、2023年10月に開始が予定されているインボイス制度がはじまると、今までどおり節税することが難しくなるので企業側も、そして実は外注される側こそ対応が必要になります。
④源泉徴収の手間が簡略化
会社や個人が給与を支払ったり、税理士等に報酬を支払う場合には、原則、その支払の都度支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引き、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納める必要があります(源泉徴収制度)。
個人事業主と業務委託契約を締結した場合でも、原稿料や講演料等一定の場合には源泉徴収が必要になりますが、給与の源泉徴収手続に比べると簡略化されており、事務負担が軽減されます。
転職・再就職者がプロジェクトワーク時代に備えてできること
これから再就職や転職・副業開始を検討している方々、特に女性は、妊活や出産、育休、帯同などのフルで働かない期間が発生する可能性が高いため、以下のポイントに注意しておきましょう。
起業・副業を自分事としてとらえる
個人事業主として働く、会社を設立する、または複数の収入源を持つために副業を始めることを、「自分自身の」働き方の選択肢の1つとしてとらえることが大切です。これによってリスクヘッジにもなるだけでなく、生き方の視野も広がります。もちろん、会社員として働くことを否定しているわけではありませんが、1つの会社に長年勤める時代は終わりつつあるのではないでしょうか。
フリーランスは確かに厳しい状況があるものの、時間や場所に制約が少ない仕事を選ぶことで、子育てや家庭との両立がしやすくなる可能性があります。自分に合った働き方を見つけることが、今後のキャリアや生活の充実につながるでしょう。
個人事業主や会社設立の基本知識を学ぶ
プロジェクトワークを始めるには、基本的に個人事業主として開業手続を行うか、会社を設立する必要があります。開業手続、記帳や確定申告の方法、請求書発行方法などは、専門家が書籍やWEB上で簡単に説明しているため、ご自身で調べることができます。興味をもって調べてみることが大切です。
また、従業員として雇用されないことは、労基法等の保護対象外になることを意味します。取引先と締結する業務委託契約の内容をご自身でしっかり確認し、不当な扱いを受けないように自己防衛することが重要です。
社会保険料についても、扶養に入らない限りはご自身で支払う必要があります。どのような選択肢があるか、合法的に費用を抑える方法を知り、税金、社会保険料と賢く付き合うことがポイントになります。