扶養には「社会保険上の扶養」と「税務上の扶養」がある
「社会保険上の扶養」とは、会社員または公務員の扶養者の厚生年金保険および健康保険の扶養に入ることです。扶養に入ると、国民年金保険料(令和2年度16,540円/月)および健康保険料、介護保険料を支払う必要がなくなります。一方、「税務上の扶養」とは、一定の要件を満たせば扶養控除(配偶者の場合は配偶者控除・配偶者特別控除)の対象となり所得税・住民税の計算上有利になる制度です。
社会保険上の扶養
対象者
◎75歳未満の同一生計の配偶者(内縁含む)および3親等内の親族で一定の条件を満たす人
◎配偶者(内縁含む)・子、孫および兄弟姉妹・父母、祖父母などの直系尊属以外は同居要件あり
◎厚生年金保険に加入できるのは配偶者のみ
扶養収入基準
◎年間収入130万円未満の被扶養者
◎同居の場合、原則年収が被保険者の半分未満
◎別居の場合、原則被保険者からの仕送り額が被扶養者の年収より多いこと
◎60歳以上の被扶養者、障がいをもつ被扶養者は年間収入180万円未満でOK
収入判定時の注意点
◎公的な年金、雇用保険の失業等給付、健康保険の傷病手当金、出産手当金等も判定時の収入に含める
◎過去の収入は関係なく、扶養に入る時点での年間の見込み収入額で判断する
106万円の壁
月額賃金8.8万円×12か月≒106万円以上の場合で、下記の要件を満たすと社会保険加入義務が発生し、扶養に入れなくなります。
政府広報オンラインより社会保険加入対象者の変遷

原則 社会保険の扶養の収入基準は年収130万円
月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であればOK 給与収入等の場合は
パート年収約106万円(月約8.8万円)以上の場合、勤務先の規模等により社会保険加入義務発生可能性あり
税務上の扶養
配偶者控除
◎税務上、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に受けられる所得控除
◎合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円、パート収入のみの場合は103万円)の同一生計の配偶者が対象
◎納税者本人の合計所得1,000万円超は対象外
☆配偶者控除の金額(国税庁HPより)

配偶者特別控除
◎合計所得金額48万円(パート収入のみなら103万円)を超える配偶者がいる場合、段階的に受けられる所得控除
◎合計所得金額が48万円超133万円以下(パート収入のみなら103-201万円)の配偶者が対象
◎合計所得金額95万円以下(パート収入150万円以下)の場合には、控除金額は配偶者控除と変わらない
◎納税者本人の合計所得1,000万円超は対象外
☆配偶者特別控除の金額(国税庁HPより)

ちなみに、出産手当金や育児休業基本給付金は、非課税所得になるよ。所得税や住民税は課税されないし、控除対象配偶者の判定上の合計所得金額にも含まれないので注意してね。
一定の要件を満たす配偶者がいる場合に税金が安くなる仕組み 配偶者控除は、
配偶者を税務上の扶養に入れる場合のパート収入の壁は原則150万円
納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると対象外
扶養控除
◎控除対象扶養親族がいる場合に一定の金額の所得控除が受けられて税金計算上お得
◎配偶者以外の16歳以上の同一生計親族等で年間の合計所得金額が48万円以下の人が対象
◎青色事業専従者給与や事業専従者控除の特例を使って家族従業員として給料を経費にしている場合は対象外(配偶者控除・配偶者特別控除も同じ)
◎扶養控除の金額は、年齢や同居の有無等により異なる
・その年の12月末の年齢が16歳以上 →一般の控除対象扶養親族 38万円
・19歳以上23歳未満 →特定扶養親族 63万円
・老人扶養親族:その年の12月末の年齢が70歳以上
直系尊属(父母・祖父母等)で同居 →同居老親等 58万円
その他同居老親等以外 48万円
配偶者控除や扶養控除等所得控除による節税額は
所得控除額×所得税・住民税率(合計15%~55%)
所得税率は所得金額によって5%~45%、住民税率は10%なので、納税者の所得が高いほど、影響が大きくなります。